「離婚したいと思っているけれど、何から考えればよいのか分からない。」
「具体的に、どう話を進めるのか分からない。」
離婚を考えたとき、このような悩みを持つ方は多いと思います。
はじめまして。
東京都の杉並区で「杉並永福法律事務所」を開設しております弁護士の小松峻也と申します。
私が弁護士になってはじめて勤務した事務所は、ある調査会社の顧問を務めており、調査で配偶者の不倫が判明した方をご紹介頂くことが多く、たくさんの離婚事件に携わりました。
私が勤務していた8年の間、離婚事件に携わっていない期間はなかったのではないかと思います。
この記事では、離婚に悩んでいる方へ向けて、そんな私の経験を踏まえ、離婚の進め方についてお話ししようと思います。
あなたの人生の再スタートの一助となれば幸いです。
目次
1 離婚の方法 -3つの方法-
離婚には、主に3つの方法があります。
「協議離婚」、「調停離婚」、そして「裁判離婚」です。
(*厳密には審判離婚というものもありますが、例外的なため割愛します。)
まずは、この3つの方法が、それぞれどういうものかお話しいたします。
(1) 協議離婚
協議離婚とは、夫婦間で話し合って、
① 離婚すること
② 具体的な離婚条件
について合意し、離婚届を役所に提出して行う離婚です。
離婚全体の約88%が、この協議離婚という方法により離婚しています(令和2年人口動態統計より)。
離婚を考えた場合、まずはこの協議離婚を目指して、配偶者と話し合いを試みるのが一般的です。
(*もっとも、配偶者と話し合うこと自体に危険が伴うDV等のケースでは、弁護士への相談が望ましいです。)
(2) 調停離婚
夫婦間で話し合っても、①離婚すること、②具体的な離婚条件についての話し合いがまとまらない場合には、調停の申立てを検討することになります。
「調停」と言われてもイメージが湧かない方も多いと思いますので、少し詳しくご説明いたします。
調停とは、裁判所に間に入ってもらい、話し合いで問題の解決を図る手続です。
裁判所が関わりますが、「裁判」とは異なり、判決で白黒付けるような手続ではなく、あくまでも話し合いによる解決を目指すものです。
離婚調停の場合、裁判官1名と調停委員2名(原則男女1名ずつ)で構成される「調停委員会」が、夫婦双方から話を聞き、離婚に関する話し合いがまとまるよう調整を行います。
調停で、あなたが直接話をする相手は、配偶者ではなく調停委員会です。
あなたが調停委員会と話をしている間、配偶者は待合室(あなたとは別の待合室です)で待っています。
あなたが配偶者と直接話す必要はありません。
反対に、配偶者が調停委員会と話すときには、あなたの方が待合室で待機することになります。
調停委員会の助けを借りて、無事に離婚に関する話し合いがまとまった場合には、その合意内容を記載した「調停調書」という書面が作成され、調停成立となります。
弁護士に依頼することなく、ご本人様限りで調停を申し立てることも出来ます。
ただ、話し合いの手続とは言え、法的な知識が前提となりますので、調停離婚を目指すのであれば、基本的には弁護士に依頼をした方がよいでしょう。
調停の待合室を見ても、多くの方が弁護士と一緒に来ている印象です。
(3) 裁判離婚
離婚調停でも話し合いがまとまらなかった場合には、離婚訴訟の提起を検討することになります。
離婚訴訟は、話し合いの手続ではなく「裁判」です。
書面及び証拠を提出して主張・立証を行い、最終的には、裁判所が下す判決によって白黒付けられることになります。
(*実際には、判決の前に「訴訟上の和解」で解決することも多いです。)
法律及び裁判手続に対する専門的知識が必要になるため、離婚訴訟を目指すのであれば、弁護士への依頼は不可欠と考えます。
実際、司法統計によれば、ほとんどの方が弁護士を選任しています。
「話し合いがまとまるとは全く思えないから、最初から裁判にしたい。」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、離婚については、裁判の前に調停を行うのが原則とされています(これを「調停前置主義」といいます。)。
そのため、話し合いが上手くいく見込みが低いと思っていても、まずは調停の申立てを行うことになります。
(*個人的な印象としては、ご依頼者様から「話し合いがまとまるとは全く思えない。」と事前に言われていたケースでも、調停で話し合いがまとまることが、しばしばあります。)
(4) 離婚方法のまとめ -まずは協議離婚-
- 離婚には3つの方法があり、原則として、①協議離婚→②調停離婚→③裁判離婚の順番で進めていく。
- まずは協議離婚を目指して、夫婦間で話し合いを行うことから始めるのが通常である。
- 調停離婚や裁判離婚を目指す場合には、弁護士への依頼が望ましい。
2 協議離婚のポイント
ここまでお読み頂いた方の多くは、まずは協議離婚を目指して夫婦間で話し合うことから始めようとお考えかと思います。
そこで、次に協議離婚のポイントについてお話しいたします。
(1) 離婚すること自体への合意
協議離婚に関する話し合いを進めていくための最初のポイントは、夫婦間で「離婚すること自体」について合意できるかどうか、です。
あなたの方では「離婚したい」と思っていても、配偶者が「離婚したくない」と言っている場合には、協議離婚はできません。
離婚届に強制的に署名させることは出来ないためです。
少し寄り道になりますが、民法には、「裁判上の離婚事由」が定められています。
裁判離婚を前提とする条文ですが、最終的に裁判になったときに離婚が認められそうかという見通しは、協議離婚や調停離婚の話し合いにも影響するため、ここで引用します。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
例えば、配偶者が不貞(不倫)をしていた場合には、民法770条1項1号に該当するため、原則として離婚事由が認められます。
不貞以外のケースでは、ほとんどが同項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当するかどうかという検討を行うことになります。
法的に難しい判断が含まれますので、ここではご参考としてご覧頂くに留め、もし裁判上の離婚事由に該当するかどうかが争点になりそうな場合には、弁護士へのご相談をご検討頂ければと思います。
(2) 離婚条件の合意
夫婦間で、離婚すること自体への合意ができた場合には、次に、具体的な離婚条件について話し合うことになります。
離婚条件については、細かく見ていくと難しい問題がたくさんあります。
しかし、ここでは協議離婚を前提としてお話ししておりますので、一般的な内容についてご説明いたします。
ア お金に関する条件
・ 財産分与
夫婦が婚姻中に取得した財産について、これを離婚に際して分けることを財産分与といいます。
一般的な流れとしては、まず、夫婦がそれぞれ保有している財産を開示します。
そして、そこから「特有財産」を控除します。
特有財産とは、結婚前から持っていた財産や、夫婦の協力とは無関係に取得した財産(一方の親からの贈与や、相続によって取得した財産)です。
夫婦が現在保有している財産から、特有財産を引き算した残りが、夫婦の協力により築き上げた財産です。
このように夫婦の協力によって築き上げた財産の金額を計算しましたら、原則として、夫婦がそれぞれ2分の1を取得するように分けます。
- きちんと全ての財産が開示されるか。
- 特有財産について合意できるか。
- 財産に不動産が含まれているような場合、分け方について合意できるか。
といったところが、財産分与のポイントです。
・ 慰謝料
典型例として、配偶者の不貞が離婚の理由である場合、離婚に際して慰謝料を請求することが考えられます。
このとき重要になるのは、不貞の存在を裏付ける証拠です。
証拠が不十分ですと、配偶者に不貞の存在を認めさせることが出来ませんし、裁判になっても、裁判所は不貞の存在を認めません。
何よりもまず、証拠を十分に集めるようにしてください。
もっとも、証拠が十分かどうかの判断は簡単ではありません。
また、客観的には十分な証拠が揃っていたとしても、配偶者が色々と言い訳をして、慰謝料の支払を拒否することも少なくありません。
離婚に伴い、慰謝料の請求を考えている場合には、弁護士への相談をお勧めします。
・ 年金分割
年金分割とは、離婚に伴い、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割できる制度です。
一般的には、分割割合を2分の1として合意することが多いです。
イ 子どもに関する条件
・ 親権者
夫婦の間に未成年の子がいる場合、離婚後、夫婦のどちらが親権者となるかを決めなければなりません。
どちらが親権者になるかは、子どもの福祉の観点から判断すべき事柄です。
夫婦で話し合って親権者を決める際にも、子どもの福祉の観点を重視すべきです。
夫婦のどちらが子どもの親権者になるかは、離婚条件の中でも、最も激しい争いになりやすい問題です。
夫婦に未成年の子がいる場合には、親権者について合意できるかどうかが、離婚条件について合意できるかどうかの大きな分かれ目になると言っても過言ではありません。
・ 養育費
例えば、妻が子どもの親権者となった場合を想定すると、親権者とならなかった夫は、子どもが生活するために必要な費用として養育費を負担することになります。
そこで、養育費の金額や支払終期(いつまで支払うのか)について決めておく必要があります。
養育費の金額は、一般に、夫婦の収入、子どもの人数・年齢等から算定されます。実務上、調停・裁判では「標準算定表」というものを基準にしていますので、夫婦間で話し合う際の参考として、ご確認をお勧めします。
・ 面会交流
子どもの親権者とならなかった親が、子どもと直接会う等の方法で交流を行うことを面会交流といいます。
離婚後、親権者とならなかった親が子どもと全く会えなくなってしまったり、反対に、親権者となった親に対して過度な面会交流の要求が来たりすることがあります。
そのため、離婚の際に、面会交流の頻度・方法等について決めておくことが望ましいです。
以上が、協議離婚のポイントになります。
網羅的に記載いたしましたが、夫婦の状況によっては、追加で決めるべき内容もあるかもしれません。
3 協議離婚の具体的な進め方
次に、協議離婚の具体的な進め方についてお話しいたします。
(1) 話し合いの前に確認すること
・ 自分の気持ちの再確認
夫婦での話し合いを始める前に、「自分は、本気で、離婚したいのだろうか」と、ご自身のお気持ちを再確認することはとても重要です。
離婚問題は、解決するまでに非常にエネルギーのいる問題です。
自分の気持ちが定まらないまま動き出しても、適切に解決することは困難です。
“相手が泣いてすがってきても、「離婚」の気持ちが変わらないか。”
これは、離婚事件のご依頼を頂く前に、私がご相談者様によく確認している内容です。
動き出す前に、自分の気持ちをしっかりと確認しておくことは、とても重要です。
・ 話し合いが出来る相手か
先に、協議離婚のポイントをお話しいたしました。
協議離婚をするためには夫婦で話し合うべき内容がたくさんあります。
あなたの配偶者は、こういった話し合いにきちんと向き合ってくれる人でしょうか。
もし答えが“No”である場合には、弁護士への相談を検討された方がよいかもしれません。
(2) 配偶者との話し合い -離婚すること自体-
協議離婚を行うためには、離婚すること自体について夫婦で合意する必要があります。
まずは、あなたが離婚を真剣に考えていることを配偶者に伝え、離婚すること自体について、受け入れてもらいましょう。
ただし、配偶者が不倫をしている場合等には、事前に十分な証拠を集めておくようにしてください。
離婚を切り出された配偶者は、慌てて証拠の隠滅を図るのが通常です。
(3) 配偶者との話し合い -離婚の条件-
協議離婚のポイントでお伝えした離婚条件について、1つ1つ、夫婦でよく話し合って決めていきましょう。
(4) 協議がまとまったら行うこと
・ 離婚協議書の作成
夫婦で話し合い、離婚すること自体、そして具体的な離婚条件についても合意できた場合には、合意した内容を記載した離婚協議書を作成しておきましょう。
単なる口約束だけでは後から問題になることが多いため、合意した内容を書面にしておくことは非常に重要です。
中には、インターネットで調べた書式等を参考に、ご自身で離婚協議書を作成される方もいます。
ただ、そのようにして作成された離婚協議書が、必ずしも実際の合意内容をきちんと反映したものになっておらず、結局、“どんな合意をしたか”が争いになってしまうケースを経験しております。
協議離婚のために努力してきたことが無駄になってしまう可能性がありますので、離婚協議書の作成は、弁護士に依頼することが望ましいと思います。
なお、離婚協議書は公正証書にするべきかというご質問を頂くことがあります。
公正証書の作成には別途の費用がかかるため、ケースバイケースではありますが、少なくとも、
- 配偶者が、離婚協議書に定められた支払をしない可能性がある
- 養育費に関する合意が含まれている
という場合には、公正証書にすることをお勧めしております。
・ 離婚届の提出
離婚届の用紙は役所で貰えます。
事前に取得しておき、夫婦で離婚協議書を締結する際に、あわせて離婚届も作成しておくとよいでしょう。
離婚協議書の締結後、離婚届を役所に提出します。
本籍地と異なる役所に提出する場合には、戸籍謄本等が必要になります。
あらかじめ、離婚届を提出する予定の自治体のHPで、必要書類等を確認しておくと慌てずに済みます。
(5) 離婚後の氏の問題
結婚の際に氏を変えた方(ここでは便宜上「妻」とします。)は、離婚によって婚姻前の氏に戻ります。
妻が、離婚後も婚姻中の氏を継続して使用する場合には、別途、「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する必要となります。
離婚届と同時に提出することが出来ますので、離婚届を提出する予定の自治体のHPで、手続を確認しておくと良いと思います。
なお、離婚の際に称していた氏を称する届は、離婚届を提出した後で提出することも出来ますが、提出期間は「離婚の日から3か月以内」とされているため、注意が必要です。
夫婦に子どもがいた場合、子どもの戸籍は離婚時の筆頭者の戸籍に残ります。
戸籍の筆頭者が夫であれば、仮に子どもの親権者が妻になったとしても、その子の戸籍は夫の戸籍に残ることになります。
子どもを妻の戸籍に入れるためには、次の2つの手続が必要です。
- 管轄の家庭裁判所に対し、子の氏の変更許可を申し立てる
- 役所に、子の入籍届を提出する
なお、妻が「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出しており、妻と子どもの名字が同じ場合でも、子どもを妻の戸籍に入れるためには、子の氏の変更許可の申立てが必要とされています。
4 話し合いで解決できない場合
「話し合ってみたが、離婚の条件に折り合いが付かない」
「既に別居しており、話し合うことが難しい」
「配偶者が不貞をしているため、話し合いではなく、きっちり請求したい。」
このように、夫婦間での話し合いで解決できない場合には、弁護士へ相談されることをお勧めいたします。
5 弁護士への相談
(1) 相談が望ましいタイミング
・ 配偶者と話し合いを始める前
配偶者と話し合いを始める前に、協議離婚の進め方等が分からなくなったときは、弁護士への相談が望ましいタイミングです。
30分~1時間程度の法律相談で、アドバイスが可能ではないかと思います。
・ 配偶者と話し合いを始めたが、考え方が分からなくなったとき
配偶者と話し合いを始めたものの、離婚条件の考え方等について分からなくなってしまったときは、弁護士への相談が望ましいタイミングです。
30分~1時間程度の法律相談で、アドバイスが可能ではないかと思います。
(2) 相談すべきタイミング
・ 話し合いがまとまり、離婚協議書を作成するとき
話し合いがまとまり、離婚協議書を作成することになったときは、弁護士に相談すべきタイミングです。
ご依頼があれば、弁護士において離婚協議書を作成します。
・ 話し合いで解決できない場合
夫婦間の話し合いで解決が出来ない場合には、弁護士に相談すべきタイミングです。
協議離婚での解決が難しいため調停の申立てを含めて検討することになりますが、調停離婚を目指す場合には、専門家である弁護士への依頼が望まれます。
・ 配偶者から離婚調停を申し立てられた場合
配偶者が離婚調停の申立てを行った場合には、弁護士に相談すべきタイミングです。
調停での話し合いになるため、専門家である弁護士への依頼が望まれます。
6 杉並永福法律事務所へのご相談
「弁護士に相談したいけど、どこに、どう連絡すればよいのか分からない」
弁護士に相談や依頼をしたいと思っても、すぐに連絡できる知り合いの弁護士がいない方の方が多いと思います。
杉並永福法律事務所では、離婚に関するご相談に随時ご対応しております。
この記事をご覧になり、杉並永福法律事務所へのご相談を希望される方は、当事務所宛にお電話又はメールでご連絡頂き、離婚に関する法律相談を希望する旨お伝えください。
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離婚問題に悩まれている方にとって、この記事が少しでも助けになれば幸いです。